器用貧乏は赤魔道士になれ

極小ベンチャー企業のひとり管理部門担当者が、多岐に渡る日々の業務のことだったり全然関係ないことだったりを書くブログ

シャープの買収劇でお騒がせの「偶発債務」って何だ?

 こんにちは、器用貧乏のケイリです。

 

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)がシャープとホンハイの買収劇における3500億円もの偶発債務の存在を報じました。

headlines.yahoo.co.jp

 

 今一番巷でHOTな会計用語「偶発債務」についておさらいしてみます。

 上記の記事を読んで「偶発債務」という会計用語をご存じない方は「3500億円も借金を隠してたの?」と思うかもしれませんが、偶発債務は借金ではありません。

 

そもそも「債務」とは何か

 Weblio辞書には偶発債務について以下のように説明されています。

現時点では債務として確定していないが、将来一定の条件が揃った時点で債務となる可能性がある取引をいう。

 

 まず、そもそも「債務」とは何かを理解する必要があります。

 「債務」とは、誰かにお金を支払う義務や、誰かに何かをしてあげる義務のことをいいます。

 例えば、”借入金”は誰かにお金を支払わ(返さ)なければならない義務のことです。

 また、”前受金”は売上代金を前もって受け取ったもので、お金を受け取った以上は商品を引き渡したりサービスを提供する義務が生じますので、それを表わしています。

 

偶発債務とは潜在的なリスクのこと

 一方、偶発債務は「現時点では債務として確定していない」ものです。つまり、お金を支払う義務や何かをする義務はまだ存在していません。

 しかし、「将来一定の条件が揃った時点で債務となる可能性がある」となれば、その企業はお金を支払ったり何かをしなければならないリスクが存在していることになります。このリスクを「偶発債務」という用語で表現しているわけです。

 

 Weblio辞書では、このリスクの具体的な例も記載されています。

手形割引、裏書手形、債務の保証、引渡済の請負作業又は売渡済の商品に対する各種の保証、係争事件に係る賠償義務、先物売買契約、受注契約等がある。

 

 上記のうちの「債務の保証」を例にとってみます。

 もしわたしが誰かの借金の保証人になったとします。

 借金の保証人になっただけでは、わたしにはまだ借金を返済する義務(=債務)は存在していません。

 しかし、借金の債務者が返済できなくなると、わたしに返済義務(=債務)が生じます。

 

  • 条件1 借金の保証人になる
  • 条件2 借金の債務者が返済できなくなる

 

 つまり、条件1だけでは債務は発生しませんが、条件1&条件2のコンボが揃うと債務が発生するのです。

 こういう状況の場合、条件1が起こった時点で債務が発生するリスクを認識しておきましょうよ、となるわけです。

 この潜在的なリスクが「偶発債務」です。

 

偶発債務の表示

 企業は、財務諸表というものを作成して経営状況を株主や借入先、税務署などに知らせなければなりません。

 財務諸表は主に以下のものをいいます。

  1. 貸借対照表
  2. 損益計算書
  3. 株主資本等変動計算書
  4. キャッシュフロー計算書

 

 1.の貸借対照表は企業の持つ資産、負債、純資産を表にしたものです。

 債務=負債ですので、もし債務が存在していれば、この貸借対照表上に記載されます。

 しかし、これまで説明してきたとおり、偶発債務は債務(つまり負債)ではありませんので、貸借対照表上に記されることはありません。

 でも、企業に投資したり融資したりする場合、企業にリスク(偶発債務)があるのなら知っておきたいですよね。

 ですので、偶発債務は、財務諸表に対する注記という形式で内容や金額が記載されます。

貸借対照表に記載されているのはほとんど勘定科目名と数字の羅列だけですので。)

 

 ちなみにこの注記には偶発債務だけでなく、固定資産の減価償却方法や、棚卸資産の評価方法、金融商品に関する事項、消費税の会計処理方法、リースに関する事項など、何ページにもわたってさまざまなことが記載されます。

 

 

 ここからは余談ですが。

 M&Aを視野に入れた交渉をする場合、たいていはデューディリジェンス(略してDD)を行います。

 DDとは、簡単に言うと、買収額を決めるために被買収企業の資産価値を測る行為のことです。

 DDは業界の分析や人事情報、法務などいろいろな分野に及びますが、財務の場合、被買収側は財務諸表や税務申告書などを提出したりします。

 偶発債務があれば、だいたいこのDDの段階で洗い出されます。というか、それもDDの目的のひとつですから。

 

 なぜDDでホンハイは偶発債務の存在を把握できなかったのか。

 本当に把握していなかったのか。

 焦らして値切りたくて知らないフリしてるだけじゃないのか。

 

 などと、ケイリの下世話な想像が膨らんでおりますので、この先も注視していきたいと思います。