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器用貧乏は赤魔道士になれ

極小ベンチャー企業のひとり管理部門担当者が、多岐に渡る日々の業務のことだったり全然関係ないことだったりを書くブログ

国境を超えるサービスの提供にまつわる消費税法の改正について

 私は読書が趣味です。

 家の近くに図書館がありますので、そこで本を借りることも多いのですが、本を購入する場合はもっぱらAmazonKindleです。

 現物を買うとあっと言う間に部屋が本だらけになってしまいます。

 そして、Kindleを手に入れてから読む本の量がすごく増えました。ま、同時期にテレビを捨ててしまったので、本を読む時間が増えただけなんですけど。

 私は、電子書籍サービスの恩恵をもっとも受けている消費者のひとりであります。

 

 で、多くの方もご存知のとおり、平成27年10月1日より、AmazonKindleで購入した電子書籍に消費税が課されるようになりました。(それ以前は消費税の課税の対象ではありませんでした。)

 これは平成27年4月に消費税法の一部が改正され、それによって「国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税の見直し」(平成27年10月1日適用開始)というものが行われたからです。

 どういう改正が行われたか、詳細は国税庁の以下のページの通りですが、

https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/cross-kokunai.pdf

消費税に関する自分自身の知識の整理のため、簡単にまとめたいと思います。

 

<復習 ~そもそも消費税って何に対して課されているの?>

 

 スーパーで野菜を買ったり、宅配サービスを受けたりすると消費税がかかります。

 しかし、すべての物やサービスに消費税がかかるわけではありません。消費税がかからない物やサービスだってあります。

 

 課税の対象について、消費税法の第4条では以下のように規定されています。

「国内において事業者が行った資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する。」

 さらにこの“資産の譲渡等”という言葉の定義は第2条で「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」とされています。

 これをまとめると、

1.国内において

2.事業者が

3.対価を得て行う

4.資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供

という4要件を満たした取引が課税の対象になるということです。

 

 つまり、国外に存在する物やサービスを国外の企業や消費者に販売すれば1.の要件を満たしませんし、交通反則金の支払いや従業員への慶弔金の支払いも対価性がないので3.の要件を満たさず、課税の対象にはなりません。

 

そして課税区分を簡単に分けると下図の①~④になります。

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 ①の「課税の対象」外(不課税)は、そもそも上記の課税対象の4要件を満たさないので、消費税は課されません。

 

 しかし、課税対象の4要件を満たしても、“消費”税という性質上、課税することがそぐわない取引(たとえば土地は消費できないので、土地の譲渡や貸し付けには消費税はかかりません)や、社会政策的配慮から課税しないこととしている取引(たとえば医療費や教育費などがあります)などは、消費税を課されない②非課税取引という区分にあたります。

 この②非課税取引に該当する取引は消費税法第6条の別表第1に限定列挙されています。ここに挙げられているものだけが非課税取引となります。

 

 課税対象の4要件を満たし、なおかつ非課税取引でもないものは、基本的には消費税が課税されますが、③輸出取引に該当すると一定の証明がされた取引は免税、つまり消費税は課されません。

 中国人旅行者が成田空港の免税店で炊飯器を買った時に消費税は課されませんよね。 これは、消費税というものは外国で消費されるものには課税しないという考えに基づいています。

 

 このように、実際に消費税が課されるのは、①~③に該当しない④の取引だけとなります。

 

 ここまで消費税の課税対象をおさらいしてきましたが、その上であらためて「国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税の見直し」という消費税法の改正内容をまとめてみます。

 

<「電気通信利用役務の提供」の内外判定基準の見直し>

 

 前述したとおり、課税対象の4要件のなかに“1.国内において”というものがあります。

 あるサービスの提供が“国内において”のものなのか、“国外において”のものなのかは、基本的にそのサービスの提供を「行う者」の事務所の所在地が国内か国外かによって判定します。

 しかし、今回の消費税法の改正によって、電気通信利用役務の提供に関してだけは、サービスの提供を「受ける者」の所在地によって“国内において”なのかどうかを判定することになりました。

 

 「電気通信利用役務の提供」とは、以下のようなものをいいます。

・インターネット等を通じて行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲーム などの様々なアプリケーションを含みます。)の配信

・顧客に、クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス

・顧客に、クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス

・インターネット等を通じた広告の配信・掲載

・インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス(商品の掲載料金等)

・インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス

・インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト(宿泊施設、飲食店等を経営する事業者から掲載料等を徴するもの)

・インターネットを介して行う英会話教室

 

 私が法改正前にAmazonKindleで電子書籍を購入した際に消費税がかからなかったのは、サービスの提供を「行う者」であるAmazon Services International, Inc.の所在地が国外にあったことにより、課税対象の4要件のひとつ“国内において”に該当しなかったからです。

 そして法改正後は、サービスの提供を「受ける者(つまり私)」の所在地が国内であるため、“国内において”という要件を満たすことになり、また他の3つの要件も満たされているため、消費税が課されるようになったのです。

 

 このように、この法改正によって、今まで不課税だった取引が課税対象となったり、今まで課税対象だった取引が不課税になったりと、下図のように課税区分が変わることとなりました。

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 変わった点は2つです。

1.サービス提供側が「国内企業」で、サービス購入側が「国外」の場合

 “課税”から“不課税”に変わりました。

 しかし、この取引の実態はサービスの輸出ですので、たとえ法改正前でも、輸出取引の証明がなされていれば免税となっていました。

 ですので、この場合は結局法改正前も後も消費税は課税されないことに変わりはありません。

 

2.サービス提供側が「国外企業」で、サービス購入側が「国内」の場合

 “不課税”から“課税”に変わりました。

 

<課税方式の見直し>

 

 「電気通信利用役務の提供」の内外判定基準の見直しによって、企業が国などに納付する消費税額を算出する方法も見直されました。

 サービス提供側が「国外企業」でサービス購入側が「国内企業」の場合、新たに“リバースチャージ方式”と“国外事業者申告納税方式”という課税方式が登場しました。

 

 消費税の納税義務は、法人や個人事業主などの事業者にあります。

 消費者は商品の購入時に消費税をお店に支払いますが、これは消費税を事業者に預けているだけなのです。

 このように、税金を負担する者(商品を購入した消費者)と、納税義務がある者(商品を販売したお店)が異なる税金を“間接税”といいます。

 

 法人や個人事業主などの事業体が納める消費税の納税額は、とっても大雑把にいうと、基本的には次の①から②を差し引いた金額になります。

①商品やサービスを販売した際に消費者や顧客企業などから受け取った消費税

②商品やサービスを購入した際に仕入先などに支払った消費税

(厳密にはもっとややこしいあれやこれやがあります。)

 

 帳簿上の勘定科目では、①を「仮受消費税」、②を「仮払消費税」としています。

 なお、①から②を差し引いた金額がマイナスとなる場合は、消費税の還付を受けることができます。

 

 さて、納税の基本的なことについて振り返ったところで、「電気通信利用役務の提供」について見直された課税方式を下図にまとめてみました。

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 繰り返しますが、課税方式が見直されたのは、サービス提供側が「国外企業」でサービス購入側が「国内企業」の場合です。

 

1.リバースチャージ方式

 

 まず「電気通信利用役務の提供」について、提供されるサービスが事業者向け(事業者でないと利用できない)かどうかで区別します。サービスが事業者向けなら、基本的にはリバースチャージ方式が適用になります。

 

 では、リバースチャージ方式とはどういう課税方式なのでしょうか。

 商品やサービスの販売に対して、その取引にかかる消費税の納税義務は本来なら販売する側にあります。

 つまり、サービス提供側が「国外企業」でサービス購入側が「国内企業」の場合、従来ならサービス提供側の国外企業に納税義務があるのですが、リバースチャージ方式が適用されると、納税義務はサービス購入側の国内企業に課されることになります。

 

 具体的な例で考えてみます。

 たとえば、国内企業A社が国内企業B社のインターネット広告サービスを10,800円(内消費税800円)で利用したとします。(国内→国内なので、リバースチャージ方式は適用されません)

 消費税800円は販売側のB社が①仮受消費税として一旦預かります。

 そしてA社はサービスを購入した際に800円の②仮払消費税を計上します。

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 一方、国内企業A社が国外企業C社のインターネット広告サービスを10,800円(内消費税800円)で利用した場合、原則的にはリバースチャージ方式が適用されます。

 納税義務はA社にありますので、消費税800円はA社が①仮受消費税として一旦預かります。ですので、実質A社がC社に支払う金額は10,000円だけになります。

 ただし、A社がサービスを購入した際に800円の②仮払消費税が発生することに変わりはありません。

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 以上がリバースチャージ方式ですが、この適用には経過措置があり、サービスを購入した国内企業の課税売上割合が95%以上の場合は、当分の間は適用されず、消費税について考慮しないこととします。

 ちなみに、課税売上割合とは、課税区分が「非課税」「免税」「課税」である売上高の合計額のうち、「免税」と「課税」の合計額の割合をいいます。

 

2.国外事業者申告納税方式

 

 「電気通信利用役務の提供」について、提供されるサービスが事業者向けでなく、サービス提供側の国外企業が“登録国外事業者”であれば、国外事業者申告納税方式が適用されます。

 国外事業者申告納税方式とは、その名のとおり、サービス提供側の国外企業に納税義務があります。帳簿上の処理は国内企業からサービスを購入した場合と変わりありません。

 この“登録国外事業者”は、以下の国税庁のウェブページで確認することができます。

https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shohi/cross/touroku.pdf

 

 しかし、もしサービス提供側の国外企業が“登録国外事業者”でなければ、購入時に計上すべき②仮払消費税については、納税額算定の際に①仮受消費税から控除することができません。

 

 

 長い長い解説になりましたが、消費税率が10%になるときにもし軽減税率が導入されたら、企業にとってはこれまた面倒なことになるのだろうなと思います。申告書の枚数がどんどん増えていくんでしょうかね。