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器用貧乏は赤魔道士になれ

極小ベンチャー企業のひとり管理部門担当者が、多岐に渡る日々の業務のことだったり全然関係ないことだったりを書くブログ

でんさい(電子記録債権)って何?

会計・経理

 経理の仕事をしていると、数年程前から「でんさい(電子記録債権)」という言葉を度々目にするようになりました。

 会社で使用している会計ソフトにも、いつの間にやら電子記録債権を管理する機能が追加されています。

 そして2013年から簿記の出題範囲に“電子記録債権・電子記録債務”が追加されたそうです。

 

 私の頭の中には、電子記録債権=手形の電子版?くらいの認識しかありませんでした。そもそも手形を仕事で利用したことがなかったので、勉強がてら調べてみようと思いたちました。

 

 まず手形についておさらいしてみます。

 

 手形とは、支払いを受けられる証券のことです。

 種類としては、「約束手形」と「為替手形」があります。

 

 約束手形は手形の作成者(振出人)と支払う人が同じです。

 しかし為替手形は、手形の作成者(振出人)と支払う人は別です。つまり、作成者(振出人)が第三者に支払いを依頼するのです。よって為替手形の場合、作成者(振出人)、支払う人、お金を受け取る人と、当事者が3人登場します。

 簿記を勉強するとき、為替手形は関係性がややこしくて躓く人も多いと聞きますが、実際のところ実務ではほとんど使われてないようです。

 

 手形は裏書きして譲渡や割引をすることができます。

 ちなみに手形を発行するには、小切手と同じく、決済用に取引銀行で当座預金の口座を開設していなければなりません。普通預金で決済はできません。

 手形を受け取った会社は、支払期日より前に銀行に持ち込んで取り立てを依頼します。

 支払人の当座預金残高が支払額より不足していると、その手形は不渡りとなります。もし6カ月間に2回不渡りを出すと、2年間の「銀行取引停止処分」を受けます。

 

 ざっとこんな感じでしょうか。

 

 では、次は電子記録債権です。

 でんさいネットのウェブサイト(https://www.densai.net/)に詳しい説明がありますが、簡単にまとめてみます。

 

 電子記録債権とは、電子債権記録機関の記録原簿に電子的に記録された金銭債権のことです。

 

 具体例を挙げてみます。

 4月1日にA社がB社に商品を100万円で販売したとします。

 この取引によって、A社には100万円の債権が発生し、反対にB社には100万円の債務が発生します。

 B社がその債務において、取引銀行を通じて発生記録請求を行うと、A社の債権100万円は電子記録債権となり、支払期日が到来すれば100万円がA社の銀行口座に自動的に振り込まれます。

 

 また、電子記録債権は支払期日前に譲渡や割引をすることができます。

 電子記録債権による取引は、でんさいネットに参加している金融機関に口座を持っている必要がありますが、どうやら普通預金の口座でも利用できるようです。(金融機関によっては違うかもしれませんが)

 不渡りに関しては手形の銀行取引停止処分に類似した「支払不能処分」制度があります。

 

 でんさいネットのウェブサイト上では、電子記録債権について以下のように表現されています。

 

 ×電子記録債権=手形・売掛債権を電子化したもの

 ○電子記録債権=手形・売掛債権の問題点を克服した新たな金銭債権

 

 単なる手形の電子版じゃなかったんだ!

 

 そんなわけで、手形と電子記録債権の違いや、電子記録債権のメリットをまとめてみました。

 

・手形は発行に手間がかかる

 チェックライターでガチャガチャと金額を印字したり、手書きだと難しい漢数字で書かなきゃいけなかったりで、面倒くさいです。

 印紙の貼付も必要ですし、印鑑も押印しないといけません。相手によっては郵送しなければなりません。

 電子記録債権はネットバンキングでの手続きが一般的で、印紙も必要ありません。決済の記録が残るので、領収書の発行もしなくて済みます。

 

・手形は紛失や盗難のリスクがある

 銀行に取り立ての依頼をしに行くのに、一千万円の手形とか持ち歩いていると失くしはしないかとドキドキしませんか。

 電子記録債権は物質ではないので、どこかで落としたり金庫からいつの間にか消えていたりなんてことはありません。

 

・電子記録債権なら分割して譲渡や割引ができる

 ここが一番インパクトのある手形との相違点ではないでしょうか。

 50万円の支払義務が存在するとき、100万円の電子記録債権のうち50万円分だけを支払先に譲渡できるわけです。

 債権の流動性が高まり、中小企業にとっては資金調達に役立ちます。

 

・電子記録債権は取り立てに手間がかからない

 手形は銀行に持ち込んで取り立ての依頼をしないとお金が入金されませんが、電子記録債権は、支払期日を待っていれば自動的に債務者から送金されます。

 

・フロード(詐欺)リスクが回避できる

 遺言書を公証人に作成してもらうことでその遺言内容を法的に確固たるものにするように、電子記録債権は、電子債権記録機関の記録原簿に電子的に記録を残すことで、金銭債権の存在を可視化したものです。

 例えば、A社が自社の保有する売上債権Yを、C社にその債権Yを譲渡すると言ってお金をせしめた後、A社が債権YをD社に譲渡してしまうという詐欺的行為も、電子記録債権を利用すれば不可能になります。

 

 電子記録債権はなんだかいい事尽くしのようですが、やはりデメリットも挙げなければ片手落ちです。

 

・システムに対するセキュリティの問題

 経理担当者のパスワード管理の不備、ウイルスなどの不正プログラムや不正アクセス、システムダウンや誤作動などがリスクとして考えられますが、これはインターネット全般にいえることでもあります。

 

・当事者が全員でんさいネットを利用できるシステム環境でなければならない

 おそらくこれが一番大きいデメリットでしょうか。特に譲渡の場合、債務者、債権の譲渡者、債権者の三者がでんさいネットを使えないと電子記録債権には対応できません。

 当社のような弱小中小企業ですと、支払不能処分のリスクを避けるためにも自身が債務者となってこの仕組みを利用するということは考えにくいので、債権者側の立場での利用が主になってくるのではないでしょうか。

 ですので、ここはお金持ちの大企業さんに電子記録債権の仕組みの普及に頑張ってもらうしかないと思います。

 

 調べれば調べるほどなかなか興味深い「でんさい」ですが、今後の情勢を見つつ、一応利用を視野に入れておいた方が良いと思いました。

 

「でんさい」のすべて 【第2版】

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