器用貧乏は赤魔道士になれ

極小ベンチャー企業のひとり管理部門担当者が、多岐に渡る日々の業務のことだったり全然関係ないことだったりを書くブログ

社外取締役の機能不全に関する考察ノート

 今年5月1日施行の会社法改正において、上場企業かつ大企業である会社が社外取締役を置いていない場合、社外取締役を置くことが相当でない理由を株主総会で説明し、株主総会の参考書類や事業報告にも記載しなければならなくなりました。

 

 また、上場企業は社外取締役を2名以上選任すべきであることが明記された「コーポレートガバナンス・コード」が今年6月1日から東京証券取引所で適用となりました。

 

 東芝の不適正会計問題においても、社外取締役の役割に疑問符が投げかけられました。

 

 このように、昨今では様々な理由で社外取締役が注目されています。

 

 社外取締役とは、取締役のうち、その会社(またはその子会社)で現在もしくは過去において取締役や従業員などでなかった人のことをいいます。

 つまり、生え抜きの取締役に比べて企業から独立した立場にいるので、しがらみがなく意見が言いやすい人たちであると考えることができます。

 

 ここで、以前「取締役と一言に言ってもいろいろあります」 jackofalltradesandmasterofnone.hatenablog.com

 のエントリーで記した会社経営における主な3つの機関設計例を再度挙げます。

1.取締役会非設置会社

2.取締役会設置会社

3.委員会設置会社取締役会設置会社のうち、指名委員会、監査委員会、報酬委員会を設置したもの)

 

 会社法において、1の取締役会非設置会社には特に社外取締役に関する規定はありませんが、取締役が複数名いる場合、業務を執行する取締役1名以外の取締役においては、社外取締役を選任することができます。

 

 2の取締役会設置会社のうち「特別取締役による議決の定め」をした会社においては、取締役のうち1名以上は社外取締役でなければなりません。

 「特別取締役による議決の定め」というのは、取締役が6名以上でそのうち1名以上が社外取締役である企業は、重要財産の処分及び譲り受けと多額の借財に関しては、事前に選定された3名以上の取締役の過半数の賛成で決められるという規定によるものです。

 この「3名以上の取締役」を特別取締役といいます。

 基本的には取締役が多い企業において、機動性を高めるための特例制度のようです。

 また、特別取締役による議決の定めがない企業でも、代表取締役以外については社外取締役を選任することができます。

 

 3の委員会設置会社においては、取締役会の中に設置する委員会の3名以上の構成員のうち過半数は社外取締役でなければなりません。

 委員会設置会社は、指名委員会、監査委員会、報酬委員会という3つの委員会を必ず設置する必要があります。

 3つの委員会とも取締役や執行役に関する事項を決定する機関ですので、その構成員のうち過半数が社外取締役でなければならないということは、社外取締役には取締役や執行役の働きを監視するという重要な役目を負っているといえます。

 

 本エントリーの冒頭にも述べた通り、コーポレートガバナンス企業統治)における社外取締役の役割が重視される時流となっているわけですが、東芝の件でも明らかになったように、ただ社外取締役を配しただけでは、コーポレートガバナンスは向上しません。その役割が機能しなければ意味がないのです。

 

 では機能させるにはどうすればいいのでしょうか?

 

 社外取締役が機能しているという具体的な場面を例えにひとつ思い浮かべるなら、取締役会の決議事項に異議を述べているようなときです。

  こういう場面における、社外取締役に関する3つのポイントを挙げてみたいと思います。

 

1.マインド

  たとえば部下の案に何かと難癖つける上司の話はよく聞きますが、それは相手が目下だと思うからできることです。

 自分と同等(仲間)もしくは目上の人に物申せる人は多くありません。特に日本人は。

 それが物怖じせずできるのは、とっても偉いと目されている人か、元々自分の意見を恐れず発言できるマインドを持っているような人が、意見を出すモチベーションがある場合ではないでしょうか。

 

 とっても偉い人はそう多くはありません。

 日本では自分の意見を堂々と発言できる人も多くありません。そもそもそういう教育を受けてきた人って少ないでしょ。

 

2.モチベーション

 また、異議を唱えるためのモチベーションとはどういうものなのでしょうか?

 何かをするモチベーションは主に二通りあると思います。ペナルティ(罰)とインセンティブ(欲求を満たす)です。

 

 取締役がその務めを怠って会社に損害を生じさせた場合、損害賠償責任を負いますが、社外取締役については、損害賠償額の限度額を定める契約をあらかじめ締結しておくことができます。

 つまり、業務執行権のある取締役に比べて、職責実態に合わせてある程度ペナルティが軽減されています。

 

 一方インセンティブの方ですが、役員報酬は取締役を監視するためのモチベーションにはなりません。なぜなら役員報酬は就任するだけでもらえるので、何もしないほうが楽ちんです。

 

 株を保有してもらい、会社の業績が上がればおいしい思いをしてもらうという方法もモチベーションにはなりません。もし不正会計によって株価の下落が抑えられているとしたならば、不正を正せば自分が損をしてしまいます。

 

3.実力

  しかしそれ以前に、取締役会の決議において異議を唱えるには、そもそも会社の業務に対する詳しい情報や経営に関する知識が必要です。それがなければ異議の持ちようがありません。

 にもかかわらず、会社から提供される情報が正しくなかったり、意図的に不正を隠蔽されてしまえば、それを見破るのは容易なことではありません。

 また、ネームバリューだけで選任された社外取締役に経営の知識がなければ、有意義な意見が出るはずもありません。

 

 

  考えれば考えるほど社外取締役が機能不全に陥る理由しか思い浮かびませんが、それでも軽い脳みそを振り絞って無理やり対策を思案してみたいと思います。

 

 まず、ペナルティですが、損害賠償以外の方法を考えます。

 例えば、不正があった会社の社外取締役をしていたものは、数年間他の会社の取締役になれないような欠格事由にするとか。

 現在の会社に入社していろいろな立場の人に出会って感じたのですが、企業や組織の幹部ともなると、地位や名誉にこだわる人(特に日本のオジサマ)が非常に多いです。このあたりにペナルティを課すと結構効果があるかもしれません。

 

 インセンティブについてですが、これも金銭以外の方法を考えてみます。

 例えば、無名でも若い起業家や経営者なら、たとえ報酬が安くても社外取締役になって積極的にコミットしてくれるのではないでしょうか。

 彼らが得る報酬は、経営サイドに立ってものを見聞きし考えるという何物にも代えがたい経験です。

 ただしこの場合、起業するマインドをもつ若者を増やす教育が必要になります。

 

 ここまで徒然と思考を綴ってきましたが、結局完璧に社外取締役という制度を機能させる方法は私には思い当たりません。

 言うなれば、社外取締役をどう活用するかは企業のトップ次第なのです。

 経営者が社外取締役に対してどのような人を選び、どのような役割を期待しているのかを注視すること自体が、その会社が健全に運営されているかどうかを見る指針になり得るのではないでしょうか。

 

社外取締役・監査役の実務 -企業価値向上のための経営モニタリングの基礎と実践ー

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