器用貧乏は赤魔道士になれ

極小ベンチャー企業のひとり管理部門担当者が、多岐に渡る日々の業務のことだったり全然関係ないことだったりを書くブログ

取締役と一言に言ってもいろいろあります

 ある日わが社の社長が何やら思案顔で言いました。

「“取締役会”があるのとないのではどう違うの?

うちにある取締役会がなくなればどうなるの?」

(ちなみにわが社には取締役会があります)

 

 というわけで調べてみたところ、なかなかいい勉強になりそうなテーマだったので、ブログエントリーとして書き留めておくことにしました。

 

 まず調べてみて初めて知りましたが、取締役の役割というのは、会社の機関設計の形によって全然違うのです。

 

 会社経営における主な3つの機関設計例を以下に挙げてみます。

1.取締役会非設置会社

2.取締役会設置会社

3.委員会設置会社取締役会設置会社のうち、指名委員会、監査委員会、報酬委員会を設置したもの)

 

 この1~3の会社において、それぞれ取締役の本質的な役割が違います。それこそ機関設計によって“取締役”という名称を変えてもいいくらい違います。

 

 まず、取締役が持つ権限として、主なものを3つ挙げます。

A.業務執行に対する意思決定権(どんな契約を結ぶかを決めること)

B.業務執行権(決めたことを実行すること)

C.代表権(会社を代表して単独で契約が結べること)

 

 これらの権限を前述1~3の機関にざっくり当てはめてみると、以下のようになります。

機関設計

役員

業務執行
意思決定権

業務執行権

代表権

取締役会非設置会社
(取締役が1名のみ)

取締役

取締役会非設置会社
(取締役が複数名で
代表取締役を定めていない)

取締役

取締役会非設置会社
(取締役が複数名で
代表取締役を定めている)

代表取締役

取締役

×

取締役会設置会社

代表取締役

取締役(取締役会)

×

×

委員会設置会社

代表執行役

×

執行役

×

×

取締役(取締役会)

×

×

 

 取締役の権限だけをピックアップして見ると、Ⅰ~Ⅲの取締役会非設置会社では取締役は前述した3つの権限のほぼ全てを持っています。

(Ⅲだけは、代表取締役でない取締役には代表権がありません)

 

 一方、取締役会が存在するⅣとⅤでは、取締役はあくまで業務執行に対する意思決定を行う取締役会の一構成員という役割に留まっています。

(その他には業務執行機関を監督するという役割を持っています)

 

 取締役会非設置会社と取締役会設置会社でなぜこのような違いであるのでしょうか。

 

 まず基本的なこととして、会社の意思決定機関の頂点は株主総会で、株主を構成員としています。

 この株主総会で決められる事項が、取締役会非設置会社と取締役会設置会社では以下のように異なっています。

 

取締役会非設置会社・・・法定事項のほか、会社に関する一切の事項を決めることができる

取締役会設置会社・・・会社の基本的な方針や重要事項のみを決める(それ以外は取締役会に意思決定を委ねる)

 

 これを前述の表と合わせて見た場合、取締役会非設置会社では、株主は一切の事項を決めることができ、尚且つ取締役も業務執行に対する意思決定権を持っていることになります。

 

 あれ? 権限かぶってなくない?

 

 そうです、被っています。なぜなら、取締役会非設置会社は株主=取締役、つまり株主1人もしくは少数の株主が取締役となってその会社を経営する場合が想定される機関設計だからです。

 もし経営がまずくなれば自分の持つ株(会社)が紙切れ(無価値)になるので、取締役は頑張って経営に励みます。

 

 一方、取締役会設置会社の場合、株主は会社の基本的な方針や重要事項以外のことは、取締役会の意思決定に任せます。いわゆる株主は経営を深く統治しない「所有と経営の分離」といわれる状態です。

 取締役も会社が儲かればホクホクできるように、業績に応じて役員報酬を決めたり、株を持たせたりして、適切な意思決定を行ってもらうようにします。

 

 このように、株主との関係によって、取締役会非設置会社と取締役会設置会社とでは、取締役の立ち位置が全く異なっています。

 誰かの肩書を目にしたときに、取締役といっても一様ではないことを知っておくといいかもしれません。

 

 で、冒頭の社長の問いですが、わが社が取締役会設置会社から取締役会非設置会社になれば、面倒なことになります。

 まず、取締役会のみで決定できる事項でも、取締役会非設置会社では株主総会で決めなければならなくなるからです。

 わが社は小規模にも関わらず株主がウン十人いるという株式が分散した状態ですので、何かを決めるたびに株主総会を開催しなければなりません。

 

 取締役会設置会社と比べて取締役会非設置会社は株主総会の招集手続きが簡素化されているとはいえ、ある意味それは経営から遠い少数株主をないがしろにしてしまうことになります。

 計算書類を招集通知に添付しなくてもよいなど、手続きを簡素化していいと言われても、付き合い上実際にはそういうわけにはいかないのが現状です。

 

 何を企んでいるのかは知りませんが、上記のことを社長に説明してわが社が取締役会非設置会社になった場合のデメリットについて理解してもらいました。

 

取締役・執行役ハンドブック〔第2版〕

取締役・執行役ハンドブック〔第2版〕