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器用貧乏は赤魔道士になれ

極小ベンチャー企業のひとり管理部門担当者が、多岐に渡る日々の業務のことだったり全然関係ないことだったりを書くブログ

ミュゼプラチナムの問題からみる前払制度の売上計上方法とそれに依存するリスクについてのケイリの雑感

 脱毛サロンで有名な「ミュゼプラチナム」運営会社ジンコーポレーションの経営状態が危ぶまれていることが話題になっております。

 

 詳しくはこちら。

 「脱毛エステ最大手」ついに「経営破たん」:刑事事件に発展も - 内木場重人

 http://blogos.com/article/130077/

 

 また、エステサロンによくみられる括前払制度に関する「特定継続的役務提供」についての詳細はこの消費者庁のページをどうぞ。

 http://www.no-trouble.go.jp/search/what/P0204010.html

 実際エステの解約や業者の倒産に関する返金トラブルの相談が多いんだそうです。

 

 しかし、今回ケイリとしての着目はそこではなく、「前払制度におけるミュゼの売上計上基準はちょっとトンデモない」という点です。

 

 そもそも、何がどうなったら売上計上していいんでしょうか。

 

 企業会計原則において、「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」とされています。

 ちなみに「役務の給付」とはサービスの提供のことです。ミュゼでいうなら、脱毛の施術行為を顧客に提供することです。

 

 上記の企業会計原則を簡単に言いかえると、商品を顧客に引き渡したり、サービスを顧客に提供し、その引き換えにお金を貰ったり、お金を貰う権利を獲得したら売上計上していいよ、ということです。

 つまり、「商品の引き渡しORサービスの提供」と「対価の受領OR対価請求権の発生」の2要件が揃えば“売上高○○○円”と帳簿に書いていいわけです。

 

 では、ミュゼに場合はどうだったのかというと、前述の記事によると、前払金を受け取った時点でその全額を売上計上していたということです。

 

 しかし、当然ながらこれは企業会計原則に反した処理方法です。

 なぜなら、前払金を受け取ることで「対価の受領OR対価請求権の発生」という要件はクリアしましたが、施術をしないうちは「商品の引き渡しORサービスの提供」という要件が満たされないからです。

 

 では、前払制度の場合、通常はどのように売上計上するのでしょうか。

 ミュゼのウェブサイトに行くと、6回36,000円(1回当たり6,000円)というコースがありましたので、これで考えてみます。

 

 36,000円全額を前払いで受け取った時点では、まだ施術をしていませんので売上計上はしません。

  1回目の施術が終了した時点で、1回分の売上6,000円を計上します。2回目~6回目も同様の売上計上処理が行われます。

 

 もし当期末までに終了した施術回数が2回までだった場合、当期に計上できる売上高は12,000円だけです。

 では残りの24,000円はどうなるのかというと、「前受金」などの負債項目に計上されます。

 

 負債というのはお金を支払う義務、もしくは何かをしなければならない義務のことをいいます。

 ミュゼとしては、代金を前払いで受け取った以上、その分の施術をする義務が生じますし、施術ができなければお金を返す義務が生じます。

 

 上記の記事で出てくる「簿外債務」とはこのことです。前払いで受け取った金額の全額を売上計上してしまったため、本来計上すべき負債が財務諸表上に記されていなかったわけです。

 

 ミュゼの財務情報はわかりませんが、今のところ判明している「売上過大計上」と「簿外債務」という問題からは、

・過大に計上した売上高を適正な数字にしてみたら、本当は赤字かもしれない

・計上すべき負債を計上してみたら、本当は債務超過かもしれない

という憶測も成り立ちえます。

 

 そういうわけで、ミュゼが本当にこういう経理処理をしているのであれば、ミュゼの中の経理の人はこのやり方はまずいなと思っているはずです。

 といいますか、思っていなかったら経理としては素人というか、少なくともプロ意識はありません。

 代金前払というのは会計学の中でもかなり初歩的というか日常的なポイントです。やはり社長の周囲を上にモノ申せない人たちで固めているのでしょうか。

 

 エステや英会話ではこの前払制度がよく見られますが、資金繰りの多くがこの前払いに依存しており、尚且つその前払いに対して保全措置も取っていない企業は、消費者や債権者にとってはリスクが高いと考えるべきだと思います。

  代金を前払いで支払うときは、損をしても諦めがつく金額を上限にしておいた方がいいでしょう。

 

 エステ会社にとって前払いで代金を受け取ることが負債であるということは、前払いで支払う消費者の側からすればそれは債権、つまりお金を貸しているようなものです。

 財務情報が確認できる企業ならまだいいのですが、通常であれば懐具合が分からず人となりも知らない相手にお金を貸したりしませんよね。

 

 また、前払いに対する保全措置とは、前払いの施術未実施分が解約によって返金されることを見越して、ある程度の資金をプールしておくことですが、これをしていないということは、前払いで受け取ったお金の先食いに歯止めが効かないということです。

 

 これは私の勝手な憶測ですが。

 資金繰りの状況が良くないと、当然前払いで受け取ったお金を使ってしまい、解約返金のために新たな前払いのお金が必要となります。

 また、売上計上が過剰なために儲かっていると錯覚し、事業規模を拡大して設備投資などにも前払いのお金をつぎ込んでしまいます。

 事業規模を拡大するとお客が増えるので前払いで受け取るお金が増えますが、お客が増えるということは一方では解約する人も増えるので、契約返金のために必要なお金も増えます。

 そしてまた勘違いで事業規模をさらに拡大してそちらにもお金を使ってしまう。

 また前払いのお金が増えて、でも解約する客の数も比例して増えて・・・

 というまるでねずみ講のようなスパイラルに陥ってしまうかもしれません。

 

 わが社も、資金繰りが絶望的に苦しく、さらに前受金という負債が多かった時期がありました。

 契約の途中解約で返金という事態にはならず、前受金も徐々に減ったので今ではその状態を脱することができましたが、顧客からの前払いに依存して資金を使い果たしてしまい、事業運営になかなかお金が割けないという苦い思いをしたものです。

 

 本当は財務状態を改善するために経営戦略を見直さなければいけないのですが、お金がなくなると焦って頭が回らなくなってしまうので、ついつい今まで通りの前払いという手法に頼ってしまうのですね。

 そしてどんどん自分の首を絞めるという事態に陥るのです。前払いって経営者側しっかりしてないと怖い手法だと思います。

 

収益認識の会計・税務

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